アブストラクト

飯島 孝(イタリア国立パドバ天文台 アジアゴ観測所:共生星 V694 Mon (MWC 560) のアウトバースト)
共生星 V694 Mon (MWC 560) は静穏時には定常的に 3000 km/s 以上の高速度のガスの放出を行っていることで知られている。この天体が 2019 年の前半からゆっくり増光を始め、V mag で10等ほどから現在は 8.3 等までになっている。不思議なことにアウトバーストが始まったら高速度のガスの放出は弱くなったようである。その間のスペクトルの変化を報告する。

伊藤芳春,池田 薫(宮城教育大),高田淑子(宮城教育大)(GR Tau観測中に現れた奇妙な明るさの変動について)
仙台市天文台の1.3mひとみ望遠鏡でGR Tauの2色測光観測を行ったところ,奇妙な変動 が現れた。比較星とチェック星を入れ替えたところ通常の光度曲線が得られた。高精度 に測光観測ができることによりフラットに問題のあることがわかった。

永井和男・伊藤芳春・他(連星勉強会)(大離心率の軌道を持つ食連星 PW Gemの分光・測光観測)
楕円軌道の食連星PW Gemの測光観測と分光観測を行った。連星は約200日の周期でありながら主極小の5日後に副極小があり大きな離心率が予想された。予備的光度曲線解析や視線速度曲線解析から、e>0.9という極端な大離心率であることが確かめられた。測光観測から食外と食中の色変化は認められなかった。取得スペクトルから両星の有効温度はほぼ等しく、従来の報告(B9やF6)よりも高温の主系列星どうしの連星であることもわかった。視線速度曲線と光度曲線の解析結果と併せて報告する。

Keisuke Isogai and VSNET/VSOLJ/OISTER collaborations(京都大学; ヘリウム激変星SDSSJ1411の多色モニター観測で探る再増光の起源)
大規模なアウトバースト直後に小規模なアウトバーストを起こす「再増光」は、一部の矮新星やX線連星で普遍的に見られる現象である。しかしその起源については決着がついていない。我々はヘリウム激変星SDSSJ1411を多色モニター観測し、再増光前後での色指数の変化を調べることで再増光の起源に迫った。

反保雄介,野上大作,加藤太一(京都大学), 綾仁一哉(美星天文台), 内藤博之(なよろ天文台), 成田憲保,高橋英則 (東京大学), 藤井貢(藤井黒崎天文台), 橋本修(ぐんま天文台), 衣笠健三(国立天文台), 本田敏志, 鳴沢真也(兵庫県立大学), 坂元誠(子ノ星教育社), 今田明(京都大学) (京都大学;V455 Andの分光観測:円盤風が矮新星アウトバーストに付随する可能性)
本講演では,すばる望遠鏡HDSを含めた5カ所の天文台で観測された,V455 Andの2007年のアウトバーストの可視分光観測結果を報告する。 アウトバーストのピーク付近では,single peakのバルマー系列と,440 km/s程度のピーク幅を持つdouble peakのHe II 4686$\AA$の強い輝線が観測された。 これは,食を持ち軌道傾斜角が大きいV455 Andの降着円盤から予想される1,000 km/s程度のピーク幅と比較して非常に小さい値である。 我々は,これらのスペクトルの特徴を高降着率白色矮星を含む天体の分光観測との比較し(e.g., Honeycutt et al., 1986, Hellier 1996),V455 Andで見られたピーク幅の小さい輝線は,円盤風由来である可能性を提唱する。 また,Uemura et al., (2012)によって得られた同天体・同時期の降着円盤の高さ方向の構造と比較すると, その二本腕構造の存在する円盤位相とHe II 4686$\AA$強度の軌道周期位相依存性に関係性が見られた。 このことから,二本腕構造が円盤風の駆動メカニズムに関係している可能性が示唆される。

小野里宏樹(国立天文台;小マゼラン雲の星団を用いたレッドクランプ星の近赤外線の色指数の年齢・金属量依存性の調査)
レッドクランプ(RC)星はほぼ一定の光度を持ち、数が多いために標準光源として利用されている。しかし、RC星の光度、色指数は弱いながら年齢・金属量依存性(種族効果)を持つため、より良い標準光源とするためには種族効果を理解することが重要である。恒星の進化モデルから種族効果の理論的な予想がされている一方、観測からはRC星の年齢を知ることが難しいために検証が追いついていない。そこで我々は、等時曲線から年齢を知ることができる星団のRC星を使い、絶対等級や色指数の種族効果を調べている。大マゼラン雲の星団での観測結果、およびそこから得られた種族効果の経験的な補正式は2017年の連星系・変光星・低温度星研究会や Onozato et al. 2019, MNRAS, 486, 5600 などで発表した。今回は更にサンプル数を増やし、より広い年齢・金属量範囲のRC星について調べるために、VMC survey DR5 のデータを用いて小マゼラン雲の星団を調べた。小マゼラン雲の星団は古い星団や低金属量の星団など天の川銀河や大マゼラン雲の星団と異なる年齢・金属量を持つ星団が多数存在している。小マゼラン雲は奥行方向に広がっていて、ここの星団までの距離が様々であるため、絶対等級の調査に用いることはできないが、色指数の調査には利用することができる。その結果、サンプル数を大幅に増やし、より広い範囲でRC星の色指数の種族効果を検証することができた。本公演では VMC survey のデータから得られた結果と理論予想との比較について報告する。

大間々知輝、辻本匡弘、海老沢研(総研大 / JAXA;NICERによって取得されたブラックホール連星 MAXI J1820+070 データのスペクトルタイミング解析)
ブラックホールX線連星(BHB)において硬X線が支配的なハード状態において、降着円盤やコロナ、ジェットなどが存在することがX線スペクトル解析やイメージング解析によって分かっているが、その幾何学的構造については議論が続いている。MAXI J1820+070は2018年3月にアウトバーストを起こたBHBであり、タイミングとスペクトルの同時解析が可能であるNICERによってよく観測された。他のBHBでも報告されているように、この天体でもX線において異なるエネルギーを持つ光子が遅れを伴い観測される、いわゆるタイムラグが報告されている。この論文ではその時間から放射領域間の距離を見積もり、降着円盤がブラックホールのごく近傍まで伸びている描像を支持している。このように異なるエネルギーを持つ光子と放射領域の関係を調べることができるので、タイムラグは幾何学的の解明に重要な情報である。しかし、ここで用いられたクロススペクトルを用いて推定されるラグ値は光度曲線で支配的な成分によって「希釈」され、本来の値よりも小さくなることが指摘されている。本研究では MAXI J1820+070 のNICERで取得されたデータに対し、希釈の影響を受けない相互相関関数を応用した手法とX線スペクトル解析を用いた結果を紹介する。

鳴沢真也、永井和男(兵庫県立大学;TESSを用いた短周期アルゴル系における振動検出調査)
短周期アルゴル系における振動検出を目的とし、TESSのデータを解析した。光度曲線の変動が報告されている10数系について、MAIA型振動の割合などを議論したい。

黄天鋭,藤澤幸太郎,茂山俊和 (東京大学 RESCEU;回転しながら中心天体から放出される流体の自己相似解と連星合体時の放出物質への応用)
近年、白色矮星合体で生じたと考えられる高速に回転している大質量白色矮星が観測されており、その周囲では高速なwindが吹いていることが知られている。このようなwindを定量的に計算するには、回転と中心重力を考慮する必要があり、それらを両方含んだ自己相似解を構築した。また、このような系は連星合体時の放出物質に対応しているとも考えられる。特に本研究で求めた自己相似解たちの中で中性子星連星合体の流体計算でよく見られる、密度分布のdouble power-lawとなる解が存在した。そこで本講演ではこの解を中心に本研究で求めた自己相似解の性質について説明し、連星合体で放出される物質への応用を議論する。

林 利憲、汪 士傑、須藤 靖(東京大学;長周期連星ブラックホールを含む三体系の探査方法の提案とその検証)
重力波観測により発見された連星ブラックホール合体現象は、その起源となる未合体の長周期連星ブラックホールの存在を同時に示唆する。しかし、それらは一般に直接観測が困難であり、現時点で未発見である。そこで、本研究では、長周期連星ブラックホール – 恒星三体系を考え、連星ブラックホールの重力摂動によって生じる、恒星の視線速度変動を用いて探査する方法の提案・検証を行った。 まず、共通軌道面を持つ三体系に対して、恒星の視線速度短周期変動を用いた探査法の提案・検証を行なった。その結果、視線速度のケプラー運動成分を適切に除去することで、短周期変動が残差として抽出可能であり、有効な探査法となり得ることが示された。 次により一般に、軌道面に傾斜が存在する三体系についての研究を行なった。その結果、視線速度の短周期変動に代わり、軌道傾斜角の力学的進化に伴って生じる、大振幅の視線速度長周期変動が有効な探査法となり得ることが示された。 本発表では、視線速度短周期・長周期変動を用いた探査法について行なった検証の結果を提示し、それらを用いた連星ブラックホールの探査可能性についての考察を行う。

鴈野重之(九州産業大学;Beドナーを持つ大質量X線連星の進化とULX)
X線パルスを示すULXの一部はBe型のドナーを持つことが示唆されている.本研究では,Be型HMXBの質量降着モデルを使い,エディントン限界を超えるような大規模X線バーストの起こる条件とその期間を推定する.それにより,観測されるような近傍のBe型HMXBのどれだけが進化の過程でULXとなるかを検討する.

谷川衝(東京大学;全金属量の孤立連星から形成される連星ブラックホールの性質の数値研究)
重力波で観測されている連星ブラックホールの起源は未解明である。我々は種 族I、II、III、さらに超低金属量星からなる孤立連星から形成される連星ブラッ クホールの性質を種族合成計算で導出した。その結果、連星ブラックホールの 質量分布は観測されているものと良く一致した。我々は連星ブラックホールの 質量分布の赤方偏移進化も調べた。20-40太陽質量の連星ブラックホールの質 量分布は赤方偏移に依存せず、50-100太陽質量の連星ブラックホールの質量分 布は高赤方偏移になるほど増加した。50-100太陽質量の連星ブラックホールが 増加するのは、この質量範囲のブラックホールの起源が種族III星だからであ る。我々の予想は、Einstein TelescopeやCosmic Explorerによって検証でき る。

前原裕之, 行方宏介, 岡本壮師, 野津湧太, 本田敏志, 幾田佳, 浪崎桂一, 井上峻, 野上大作, 柴田一成(国立天文台;せいめい望遠鏡とTESSを用いた若いK型主系列星LQ HyaとV833 Tauにおけるスーパーフレアの測光・分光同時観測)
我々は若いK型主系列星LQ HyaおよびV833 Tau のTESSによる観測期間に合わせて、3.8mせいめい望遠鏡を用いた連続分光観測を行い、可視連続光の放射エネルギーがそれぞれ10^35 erg, 10^34 ergのスーパーフレアを観測することに成功した。どちらのスーパーフレアにおいても、Hα線の線幅(FWHM)は可視連続光のピーク付近で最も大きくなり(~10Å)、可視連続光強度の減光と同程度のタイムスケールで減少する様子が観測された。同様の現象はM型星AD Leoの10^33 erg程度のエネルギーのスーパーフレアでも観測されたことが報告されており(Namekata et al. 2020, PASJ 72, 68)、加速された非熱的電子が彩層下部/光球上層まで突入することでHα線幅を増大させると同時に可視連続光放射にも寄与するという描像が恒星スーパーフレアで普遍的に成り立つことを示唆する。

伊藤潤平、反保雄介、小路口直冬、柴田真晃、磯貝桂介、加藤太一、野上大作(京都大学)、VSNET Collaboration(京都大学;矮新星を経由するAM CVn型星への進化経路)
AM CVn型星は主星に白色矮星、伴星にヘリウム星やヘリウム白色矮星を持つ近接連星系であり、水素に富む矮新星よりも短い軌道周期を持つ。AM CVn型星の形成シナリオの1つに矮新星の伴星表層で水素が枯渇するという考え(hydrogen AM CVn)があり、その証左として、矮新星からAM CVn型星への進化途上の天体が幾つか観測されている。本講演ではAM CVn型星への進化シナリオをhydrogen AM CVnを中心に紹介する。加え、2021年に凡そ17年ぶりに増光が観測された矮新星LL Andromedaeがhydrogen AM CVnへの進化途上にあるのではないかと考え観測を行ったのでその結果も報告・議論する。

藤﨑駿介(鹿児島大学;近赤外線分光観測によるミラ型変光星の変光フェイズと酸化バナジウムの吸収線の関係)
私たちは2019年3月より鹿児島大学1m望遠鏡に名古屋大学のIRSF用近赤外線分光器を取り付け、59個のミラ型変光星の分光モニタリング観測を行ってきた。約2年間の観測の結果、O-richのミラ型変光星ではλ=1.05㎛のVOの吸収線の深さが可視光の変光周期に連動して変動しており、明るいときには浅く、暗いときには深いという関係性が得られた。さらに、VERAやGaiaによるミラ型変光星の距離の情報をもとにVバンドの絶対等級を求めたところ、λ=1.05㎛のVOの吸収線の等価幅とVバンドの絶対等級に相関が見られた。

田口健太(京都大学;新星 V1405 Cas (Nova Cas 2021) の最初期のスペクトルの進化)
新星とは、白色矮星を主星に、晩期型星を伴星に持つ近接連星系において、主星の表面に降着した伴星由来の水素ガスの層がある程度の質量に達することで、この水素ガスが暴走的な熱核反応を起こして増光する現象である。我々は京都大学附属岡山天文台せいめい望遠鏡を用い、2021 年 3 月に発見された新星 V1405 Cas (Nova Cas 2021) の可視分光観測を発見 9.88, 23.77, 33.94, 71.79, 81.90 時間後に行った。発見 9.88 時間後のスペクトルのみ N III や He II といった電離度の高いイオンの輝線が顕著に検出された。また、Balmer 系列や He I などの P Cygni 型スペクトル線の青方偏移した吸収成分の速度が 9.88 時間後から 81.90 時間後の間で減速していることが判明した。これらのスペクトルの変化は、新星の可視光での初期の急な増光は光球面の膨張に対応する、という理論的な標準描像と合致し、これを裏付けるものであると言える。

高妻真次郎(中京大学;W UMa型連星Aタイプにおける質量移動と角運動量損失の連星パラメータへの依存性)
近接連星の進化に大きな影響を与える質量移動や角運動量損失が、連星のどのようなパラメータに依存するのかを調べた。今回は、W UMa型連星Aタイプについての結果を報告する。必要なデータは過去文献から収集しており、公転周期の変化率から質量移動率と角運動量損失率を算出し、各率と相関を示すような連星パラメータを選出した。選出したパラメータについて、偏回帰プロットを用いて擬似相関を取り除き、本質的な相関をもつ系のパラメータを絞りこんだ。さらに、回帰分析を行うことで、その依存性を調べた。講演では、手法や結果について報告する。

田畑佳美(岡山理科大学;りゅう座BY型変光星V1402 Oriの観測)
りゅう座BY型変光星は黒点の影響によって光度曲線が変化する回転変光星の一つである。V1402 Oriはりゅう座BY型に加えて、UV Cet型星と同様のフレアを示すことが知られている。2種類の変光星の性質を持つが、観測例が少ないため、詳細は分かっていない。本研究ではフレアの光度曲線をとらえることが出来たため報告をする。

富永愛侑 (東京大学, JAXA/ISAS), 海老沢研 (東京大学, JAXA/ISAS), 辻本匡弘 (JAXA/ISAS), 榎戸輝揚 (理化学研究所), 早崎公威 (忠北大学)(NICER による X 線連星 Circinus X-1 の軌道周期を完全にカバーした観測)
Circinus X-1(以下、Cir X-1) は、中性子星を持つ周期 16.6 日の X 線連星であり、1 型 X 線バースト、軌道周 期に依存する光度変動、kHz スケールでの準周期的変動などの多様で複雑な光度変動を示す、他に例を見ない天 体として長年知られている。近年、X 線連星として唯一、付随する超新星残骸が発見され、系の年齢が 4600 年未 満と見積もられた (Heinz+13)。即ち Cir X-1 は X 線連星で最も若く、中性子星や連星の進化を理解する上で重 要な天体と判明した。特に、その特異な時間変動性と降着円盤の安定性の関係は重要な研究課題である。しかし、 円軌道で周回する連星で起こる伴星から中性子星へのロッシュローブ質量輸送と異なり、伴星からの質量降着の 様子が良くわかっておらず、様々な時間スケールで時間変動性を特徴付けることから始めなければならない。特 に短い時間スケールでの研究には、最も大きな望遠鏡面積と高い時間分解能を有する NICER 装置が最適である。 我々は昨年度、NICER 装置を用いて、1 周期内を完全にカバーするために 100 回の観測を行った。近星点直前 で数日間減光し、直後から増光するという特徴は、10 年間の長期観測結果を保持する MAXI 装置でも度々観測さ れており、本観測でもライトカーブから同様の特徴が見受けられた。今回は特にこの近星点付近の変動に注目し てスペクトル解析を行った。減光期には 1–2.5 keV に散乱由来と考えられる超過成分が存在し、高階電離鉄の輝 線が観測された。一方増光期には、鉄の吸収線が He 状から H 状へ徐々に遷移する様子が見られ、Cir X-1 の光 度変動と連動して視線方向に存在する物質の電離が進行する様子が明らかになった。本講演では詳細な解析結果を報告するとともに、一連のスペクトル変動の解釈について議論する。

谷口大輔(東京大学;赤色超巨星の分光モニタリング計画)
赤色超巨星大気の時間変動は大質量星進化の理解のために重要であるが、分光観測研究が十分に進んでいない。我々はLLP京都虹光房によって製作された小型分光器「光藝」(R>1,000、460-840nm)を私設谷口天文台のカセグレン式反射望遠鏡(口径30cm)に搭載し、数個の赤色超巨星の3年間以上にわたる分光モニタリングを計画している。本講演では初期観測成果と今後のモニタリング計画の詳細を紹介する。

内山秀樹(静岡大学;「すざく」衛星によるかんむり座σ2・アルゴルのX線フレアからの中性鉄Kα輝線の検出)
「すざく」衛星のX線データを用い、かんむり座σ2・アルゴルのX線フレアのスペクトル解析を行った。その結果、中性鉄Kα輝線を高階電離鉄輝線から初めて分離検出できた。フレアで生じた高温プラズマからのX線が恒星表面で反射し、この中性鉄輝線が生じた可能性が考えられる。その等価幅から、恒星フレアのプラズマの空間構造(恒星表面からの高さ)を制限することを試みている。

藤本正行、勝田豊(北海道大学)、須田拓馬(東京工科大学)、茂山俊和(東京大学)(北海道大学;恒星進化の最後の鉄中心核の熱的進化と超新星爆発への道)
大質量星は進化の最後に鉄からなる中心核をケイ素、酸素、炭素の殻燃焼が囲む構造をとる。現行の超新星爆発モデルは、この後光分解によって鉄の中心核が重力崩壊し、その反跳によって引き起こされると考えられている。今研究では、恒星進化の理論から、この鉄の中心核の進化の過程を検証、超新星爆発を誘起する過程の可能性を議論する。

柴田真晃 VSNET & VSOLJ Collaborations(京都大学;IW And型矮新星の統計的研究)
IW And型矮新星は, 明るさ一定の期間 (standstill) と小規模な増光 (outburst) を繰り返す, 特異な矮新星である。近年のサーベイの進展により, 時間分解能の高い観測がなされるようになったことで IW And型矮新星と同定される天体の数が飛躍的に増加し, 今では100天体以上が報告されている。我々は, 様々なサーベイデータを集約することで個々の IW And型矮新星の光度曲線を確認し, それらの統計的性質を調べた。本発表では, その結果と確認された相関について報告する。

斉尾英行(東北大学;Heartbeat 連星に現れるロスビー波が示す自転のpseudo-synchronization)

聖川昂太郎(東京大学;重力波観測とPopulation IIIの初期質量関数)
重力波観測から得られる連星ブラックホールの合体率から種族IIIの星の初期質量関数について議論する。

武尾舞(都立大),林多佳由(NASA’s GSFC/UMBC),石田学,前田良知(宇宙研)(X線観測による矮新星におけるX線放射領域の空間分布の解明)
我々は、X線天文衛星「すざく」のデータを用いて矮新星からのX線放射プラズマの空間分布を解明するための研究を進めている。これまでの研究から、爆発時には光学的に厚い円盤が白色矮星の表面付近にまで迫る一方で、静穏時には円盤が途中で途切れており、その内側に硬X線を放射するプラズマが形成されているという従来の描像と矛盾のない結果が得られている。これに加えて、爆発時には、光学的に厚い円盤の上にX線を放射するコロナが点在していることを発見した。一方の静穏時には、光学的に厚い円盤の内側の縁でプラズマが急加熱されて鉄のK殻が電離されるほどの高温まで上がり、X線を放射していることを発見した。本発表ではこれらの結果を詳述し議論する。

甘田 渓(鹿児島大学;NESS (Nearby Evolved Stars Survey) - NROで観測された冷たい星周ガス縁の統計的性質)
小・中質量星 (M < 8Msun) の進化末期である漸近巨星分枝(Asymptotic Giant Branch; AGB)段階の星(以下AGB星)は、天の川銀河において、炭素や酸素や窒素のような比較的軽い元素の主な供給源だと考えられている。それらの元素の中でも、炭素や酸素はAGB星中心核周りのヘリウム燃焼殻で合成された後、Themal PulseによるThird Dredge Up (TDU)により、ヘリウム燃焼殻から星表面まで運ばれる。そのため、天の川銀河の化学進化において、TDUによりどのくらいの量の元素が星表面まで汲み上げられるのかは重要な問題であるが、その効率やどの程度質量放出率が大きくなるのかはまだわかっていない。  そのような中、星周ガス縁の統計的解析など行っているNESSプロジェクトが走っている。このプロジェクトでは、太陽近傍の約850個のevolved starに対する、JCMTを主に用いたCO J = 3 → 2輝線およびダスト連続波観測だけでなく、より広がった冷たいガス分布を明らかにするために、野辺山45m電波望遠鏡を用いた12CO, 13CO J = 1 → 0輝線の撮像観測(27天体)と一点観測(212天体)も行っている。その撮像観測の結果、J = 3 → 2輝線より広がった輝度分布をJ = 1 → 0輝線で観測することができた。また、TDUのプローブである12CO/13CO輝線強度比を調べたところ、星から動系方向に沿って12CO/13CO組成比が劇的に変化している天体が3天体見つかった。今回のコロキウムでは、この動系方向に沿った組成比の変化の考察や、一点観測の統計的な結果、さらには特異な形状をした星周ガス縁を持った天体など野辺山45m電波望遠鏡の観測結果を主に紹介する。

橋本真雄(鹿児島大学;OH/IR星RAFGL5201の年周視差測定と多波長データを用いた進化段階の考察)
 AGB(Asymptotic Giant Branch:漸近巨星分枝)段階にある恒星には様々な種類(半規則型変光星:SR、ミラ型変光星、OH/IR星)が存在し、これまで私たちはSRやミラ型変光星、OH/IR星に関しては高精度な距離測定を行ってきた。しかしAGB星の進化についてより詳細に理解するには、これまで研究を行ってきた天体よりもさらに進化が進んでいる恒星について、同様に距離測定を行い星周構造や運動の比較などを行い、赤外線観測の結果なども用いた多角的な解釈が必要であると考えた。  そこで今回私は、OH/IR星であるRAFGL5201について、VERAを用いた高精度位置天文観測を行うことで、年周視差 π = 0.61± 0.03 (mas)、距離 D = 1.64 ± 0.09 (kpc)を得た。 また、この天体についてはGaia DR2のデータを用いることで、Gバンドでの変光振幅が他のOH/IR星に比べて非常に小さいことが判明しており、OH/IR星よりも進化の進んだnonvariable OH/IR星である可能性があることがわかった。加えて赤外線観測の結果を用いてOH/IR星とnonvariable OH/IR星にどのような違いがあるのかについても考察を行なった。これらの結果から、RAFGL5201がOH/IR星、nonvariable OH/IR星どちらに属するのか考察を行い、RAFGL5201の進化段階について探って行く。

今井 裕、ESTEMA Team (EAVN Synthesis of Stellar Maser Animations)(鹿児島大学: ESTEMA (EAVN Synthesis of Stellar Maser Animations)
我々は、2018年5月から2022年5月にかけて長周期変光星BX Cam及びNML Cygに付随する水及び一酸化珪素に対するEast Asia VLBI Network (EAVN) を使った高頻度モニター観測を行なっている。星の脈動変光に連動してこれらメーザーがどの様に振る舞うかを動画の形で追跡し、メーザー励起機構を解明することを目指す。 またそれを通じて、脈動変光衝撃波の伝播や非等方的物質放出の起源の解明を目指す。今回の講演では、水メーザーの連続VLBI撮像観測の結果を中心に、ESTEMAの進行状況について紹介する。

浦郷陸: ミラ型変光星をもちいた銀河構造研究
鹿児島大学光赤外線1m望遠鏡グループは天の川銀河に存在するIRAS Poitn source catalogより選出したミラ型変光星を約20年間、近赤外線でモニタリング観測することを実施し、 周期光度関係を用いて距離を決めることで、銀河系内における3次元構造を得た。本発表では、VERAと連携することで得られた距離決定精度が高い3.4μmの波長を用いた手法を紹介し、天の川銀河の構造について議論する。

宇野孔起: 特異な突発天体Fast Blue Optical Transientの光度曲線モデルと観測可能性
近年、謎の突発天体Fast Blue Optical Transient(FBOT)が報告されている。FBOTは急速な増減光と超新星の100倍ほどの極めて高い光度が特徴であり、通常の超新星モデルでは説明できない。我々は、超新星のような点源爆発ではなく、恒星風のような定常的なアウトフローを仮定したWind-Drivenモデルを新たに考案し、FBOTの光度曲線の説明を試みた。本講演ではモデルの紹介とその結果を報告するとともに、FBOTの観測可能性に関しても議論する。

大島 修・赤澤秀彦(岡山理科大学): 活動的食連星TZ Booは4重食連星系だった
他に例がないほど激しい歴史的な光度変化を見せてきたW UMa型食連星家であるTZ Booは、赤澤の密な観測により突発的な極小光度の減光を示すことも発見されていた。 このほど我々はTESSの2020年の観測データから、この現象が9.5日周期の食であることを見出した、Rucinsky達によって予言されていた食を起こさない第3+4体連星が、実は分離型食連星系であることがわかった。 この4重食連星系について報告する。

小川真央:爆発初期スペクトルの系統的な調査でせまるIa型超新星の親星と爆発機構
Ia型超新星(以下、「超新星」と呼ぶ)は、近接連星系をなす白色矮星の熱核暴走爆発であるが、その爆発機構は未解決問題の1つである。近年のサーベイ観測技術の発展により、爆発初期の超新星が多く発見され、follow up分光観測も行われている。爆発初期のスペクトルから最外層の構造が分かるが、爆発モデルの違いによってこの最外層の密度や組成が異なるのではないかと考えられている。本講演では、爆発初期の超新星14天体についてスペクトル輻射輸送計算を行うことで得られた親星の最外層の密度・元素組成の構造について紹介し、超新星の爆発機構について議論する。

Takanori Ichikawa, Miyu Kido, Daisuke Takaishi, Yoshito Shimajiri, Yusuke Tsukamoto, and Shigehisa Takakuwa (鹿児島大学;ALMAよるClass II 連星 XZ Tau の互いに傾いた星周円盤と軌道運動の検出)
本講演では、Class II 連星XZ Tauの、ALMAの複数年にわたるアーカイブデータの解析結果を報告する。2015、2016、2017年と1年おきに観測された、1.3-mm ダスト連続波のデータを解析した結果、XZ Tau連星系の時計回りの軌道運動を検出し、3年間での軌道運動の大きさが3.4天文単位に達していることが明らかになった。XZ Tau では、これまでも可視光や近赤外線を用いた軌道運動の観測は存在していたが、ALMAの高い位置決定精度(~30 mas)は、1年おきに軌道運動を測定できることを示した。さらに、CO分子輝線の観測データから、個々の星周円盤の回転運動を同定した。個々の星周円盤の円盤面はそれぞれ傾いているとともに、それらは検出された軌道面とも異なっている。これらの観測結果は、連星系が共通の円盤が分裂して形成されるのではなく、分子ガスが乱流によって分裂することにより形成される可能性を示唆している。

内藤博之:激変星における周連星系円盤
古典新星V1280 Scoの高分散スペクトルに速度幅の狭いダブルピーク輝線が見られた。この輝線の起源について、周連星系円盤の存在の可能性を議論する。

山中雅之:光赤外線大学間連携による特異なIa型超新星 SN 2021zny の観測
我々は光赤外線大学間連携の枠組みを通して特異な性質を示すIa型超新星SN 2021zny の可視・近赤外線観測を実施してきた。せいめい望遠鏡で得られた早期スペクトルは標準的なIa型超新星に比べて強いCII 6580の吸収線を示した。また、SiII 6355 の吸収線速度も遅く、その等価幅も小さい。これらの特徴はスーパーチャンドラセカール超新星との類似性を示す。私たちは、光度曲線・色・スペクトルの進化からこの超新星のエジェクタ性質について議論する。

Ross Alexander Burns:Variable and periodic masers in high-mass stars
Periodic maser emission has been known in several high-mass protostellar systems. In this talk I will introduce some notable sources and discuss the possible mechanisms that give rise to variable and periodic emission based on observational data and theory

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