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SKA計画とは?

 SKA(エスケーエー)とは世界10カ国以上の国々が数千億円をかけて2020年代に南アフリカとオーストラリアに電波望遠鏡を建設する計画です。ミリ波・サブミリ波望遠鏡ALMAでは探ることのできないセンチ波・メートル波の電波を観測します。
 

センチ波・メートル波を探る科学的な意義は?

水素などの特定物質を観測できる

 この波長帯では中性水素の超微細構造線の輝線や吸収線を観測できます。これらは宇宙の中性時代から再イオン化時代までを探ることのできる数少ない方法です。また中性水素を探ることは星や銀河の誕生と進化に迫ります。さらにこの波長帯では、生命や生命活動に関係する生体有機物分子も調べることができ、宇宙で生命が誕生する過程にも迫れるかもしれません。
 

シンクロトロン放射が観測できる

 この波長帯はシンクロトロン放射の観測に有利です。電子などが磁場中で加速されて放たれるこの放射は、宇宙のほとんどの天体に付随するため、それらの歴史・分布・背景物理に迫ることができます。特にパルサーの距離とパルス周期を極高精度に測ることで、重力波によって生じる時空振を捉えられるとも期待されています。また一般相対論が関わる近接した連星系を調べることができます。
 

ファラデー回転が観測できる

 この波長帯はファラデー回転の観測にも有利です。磁場中を偏光が通り抜ける際に生じるこの現象は、宇宙空間の磁場を探る方法として、数少ない、しかし極めて有効な手法です。宇宙大規模構造に宇宙磁場はどのように分布しているかを初めて解き明かし、宇宙論に新たな視点をもたらすと期待されています。銀河磁場の誕生と成長、乱流の物理にも迫ることができます。
 

どのような性能?

 上記の科学目標を確実に推進するために必要な性能を、科学者・技術者は長い年月をかけて議論しました。そして、以下のような性能が必要であると結論付けました。
 

この波長帯の代表的な観測所である米国の旧VLA対比で50-100倍の感度がある
この波長帯でかつてないほどの幅広い帯域(50 MHz - 30 GHz)を観測できる
200平方度(満月は0.2平方度)という圧倒的な広視野を一度に観測できる
この波長帯で0.1秒角という類まれなる空間分解能をもつ

 
 この要求性能を達成するためにどのような望遠鏡を建設しなければならないか検討した結果、観測装置を数100の基地局に分けて数1,000kmの範囲に分布させる必要があることが分かりました。これはオーストラリア大陸の大きさに相当する、まさに地球規模の望遠鏡です。未だかつてない大プロジェクトが必要だったのです。
 

どのような計画?

 大プロジェクトを1つの国だけで進めるのは、人的にも金銭的にも無理があります。そこで世界各国が協力をすることで建設を目指すことにしました。計画は大気のノイズが最も少ない南アフリカとその周辺国、そしてオーストラリアとニュージーランドに分散させて建設することに決め、工期を1期と2期とに分けることにしました。一期(SKA1)は最終構成の約10%を2017年から建設し2023年から運用、二期(SKA2)を最終構成の90%を2023年から建設し2028年頃から運用することに決めました。
 

南アフリカとその周辺国

 SKA1では133台の15m SKAパラボナアンテナと64台の13.5m MeerKATパラボナアンテナを合同運用します(SKA1-MID)。これらはSingle Pixel Feed (SPF)を搭載します。
 SKA2ではSKAパラボナアンテナを2,500台に増やし、最大3,500 kmにまで分布させます(SKA2-DISH)。これらはWide Band Single Pixel Feed (WBSPF)またはPhased Array Feed (PAF)を搭載します。また250の中間波長高密集開口アンテナ局を設置し、広視野観測をします(SKA2-MFAA)。
 

オーストラリアとニュージーランド

 SKA1では256基の長波長開口アンテナで構成される基地局を512局設置します(SKA1-LOW)。また36台のASKAPパラボナアンテナを活用してPAFの開発を行います。
 SKA2ではアンテナ総数を50万台にまで増やし、最大300 kmにまで分布させます(SKA2-LFAA)。
 

世界情勢と日本の立場は?

 SKA計画を各国政府の予算支援の下で推進している国々はオーストラリア・南アフリカ・イギリス・イタリア・インド・オランダ・カナダ・ 中国・ ニュージーランド・ノルウェーの10カ国です。すでにイギリスとオーストラリアではSKA第1期の建設・運用のために、数100億円規模での予算が承認されています。
 
 2014年度には、2004年に策定された「SKAサイエンスブック」から10年が経過したことを受けて、SKAサイエンスブックの刷新が図られました。日本からも私を含め多くの方が執筆に加わっています。建設に関しては、SKA1の規模の見直しが無事終わり、仮デザイン審査が大詰めです。今年度はさらに、運用についてもポリシーを含めて具体化されていきます。そしていよいよ2016年からはSKA2のコンセプト設計も始まります。
 

日本の現状と将来は?

 日本はアメリカなどと同様、まだ大型予算を割いてSKA計画に参加をしていません。しかし関心を持つ国として研究者個人レベルでの協力が進んでいます。日本がこのような世界規模の計画に参加することは、計画を通じた科学・技術の進歩や人材の育成に大きな意義をもちます。世界中の研究者が英知を集結してSKA計画を進めている中で、科学・技術の先進国として日本が世界から大きな期待を持たれています。日本学術会議はSKA計画を「学術の大型研究計画に関するマスタープラン2014」の中で重点大型研究計画に選んでいます。
 
 日本では日本SKAコンソーシアム(SKAJP)という180名を越える科学者・技術者の組織が活動の中心となっています。そしてコンソーシアムの主要なメンバーが科学目標や観測装置の検討で具体的な貢献をしています。私もその一人です。私はSKAJPの副代表を務めています。そして国際SKAの宇宙磁場科学検討班のコアメンバーでもあり、SKAサイエンスブックに寄稿するなど活動をしています。
 
 このたび私は国立天文台委託研究(大学支援)事業の支援の下、SKA計画の調査研究を主目的とした鹿児島大学特任准教授に着任することになりました。この秋にはSKAの本部がある英国マンチェスターに数ヶ月間の滞在を行い、調査研究を進める予定です。今後我が国がSKA計画にどのような関わりをもつことができるか、もつべきかについて、SKAJPのメンバーと共に慎重に検討を重ねて参ります。
 
 この紹介文を読んで、SKAJPの活動に参加したいまたはSKAJPの情報を共有したいと思われた方は、どうぞ遠慮なく私までご連絡ください。SKAJPへの参加ならびに脱退は自由です。会費の徴収や活動の義務もありません。
 

基地局の想像図

 基地局ごとに100kWクラスの太陽光発電所や蓄電装置を設置するクリーンでエコな観測所を計画しています。基地局の他にSKAの中心には巨大な中心局が設置され、エクサフロップス性能(2012年世界No.1スパコン・京の100倍の演算速度)のデータセンターなども建設されます。SKA計画とは、これらすべてを含めたものです。
 

図)南アサイトの様子。中高周波用のパラボナアンテナで構成される。©SKA機構
 

図)豪州サイトの様子。TVアンテナ状の低周波アンテナで構成される。©SKA機構
 

SKAの試験機

図)豪州高周波試験機ASKAP。©CSIRO
 

図)豪州低周波試験機MWA。©CSIRO
 

図)南ア高周波試験機MeerKAT。©SKA-Africa


Australian SKA Pathfinder (ASKAP, アスカップ)

 ASKAP計画は36台の12mパラボナアンテナで構成されるオーストラリアの電波干渉計です。設置場所は西オーストラリア、Perthより北に位置するMurchison Radio-astronomy Observatory (MRO)というところです。すでに36台のアンテナが現地に設置されています。多くは半径1km程度に分布し一部で最大基線長10km程度を構成します。
 
 SKAに向けた最新のPAF(Phased Array Feed)技術などを搭載し、これにより飛躍的に向上された広視野(30平方度)・高感度(1平方度あたりおよそ100の電波源を探る)を活かした、30,000平方度(全天の75%)の準全天サーベイを行います。2017年3月時点で、30台のPAFがアンテナに設置されました。残り6台も2018年初頭には設置予定です。
 
 36台をフルに使ったPOSSUMサーベイは1.1-1.4 GHz帯域だけで準全天サーベイを行います。これに先駆けて、現在は12台のII型PAF搭載のアンテナ(ASKAP12)を使った初期科学運用のフェイズにあります。初期科学運用では、観測領域と感度は劣りますが、288 MHz x 3バンドで、PAFが観測できる700 MHzから1800 MHzの全帯域に近いデータを、各観測領域にて取得します。特に広帯域なデータが必要なサイエンスで成果が期待されます。

周波数バンド 700 - 1000 MHz 1100 - 1400 MHz 1500 - 1800 MHz
 角度分解能(arcsec) 32 24 18
視野あたり積分時間(hr) 10 10 10
12台の予想感度(μJy) 51 37 43

 ※数値は暫定的なものなので薄字にしてあります。自己責任で参考にしてください。

 ASKAPではPOSSUM(Polarization Sky Survey of the Universe’s Magnetism)という計画で銀河団や大規模構造の磁場を探査します。POSSUMは初期運用5年間で占有が決まっている、10あるASKAPの観測計画の一つです。オーストラリアに生息するねずみを大きくしたような動物の名前にもじっています(ポッサムは狸と訳されることがあるみたいですが、見た目は別の生き物です)。
 
 POSSUMは宇宙磁場をサイエンステーマにした全天の偏光電波観測をユニークに行います。我々のグループでは700-1800 MHzの帯域で25-40µJy/beamの感度で1平方度あたりおよそ10-25の電波源を探る提案をしています。ASKAPでは他にも全天連続電波深探査EMU, 全天HI(中性水素ガス)探査WALLABY, ほかにもFLASH, VAST, GASKAP, CRAFT, DINGO, VLBI, そしてCOASTという計画がなされる予定です。私はPOSSUMのメンバーとしても活動中です。